スマートとは
帰り道に家へお土産でも買って帰ろうと、駅のお菓子屋へ行った。
もう閉店間近で商品も少なかったが、いくつか美味しそうなお菓子が残っていた。今日はこれを買って帰ろう。
しかし、私の前にレジへ並ぶ中年の女性が、何やら会計に手間取っているようだった。
話の内容から察するに、女性はスマートフォンで決済したものの、その後にお店のクーポンを持っていたことを思い出して、その金額を引いて欲しいとお願いしているらしい。
若い店員が何度かレジを操作しているがうまくいかないらしく、謝りながら店の奥に消えていった。
少しして店長が出てきて、謝りながらも慣れた様子でレジやスマートフォンを操作していった。
「あーはいはい、なるほどなるほど」
と、レジやらスマホやらを叩いていく。
あぁ、よかった。この店長が来たならもう大丈夫。この人のクーポンも適用されるだろう。
しかし、私は驚いた。
店長が首を傾げはじめたのだ。
え、この流れで店長が対応できないケースあるんだ。
すると女性は痺れを切らしたのか、または後ろに並ぶ私に申し訳ないと思ったのか、「あ、もういいです」と商品を受け取ってそそくさと帰っていった。
残された店長と私。
気まずい空気のなか、私は現金を取り出した。